
「バウルの響き」制作実行委員会は、「パルバティ・バウルを日本に呼びたい!」「彼女の公演を、日本の皆さんにも見て欲しい!」という想いで集った、有志の集まりです。
パルバティ・バウルの弟子である佐藤友美を実行委員長に、長年の友人である阿部櫻子を副実行委員長、彼女の公演をインドで見て以来のファンであり、インド芸能を日本に紹介することを使命とする井生明を事務局長に、この三人を中心に活動しています。
実行委員からのメッセージ
阿部櫻子(あべさくらこ)「バウルの響き」制作実行委員会 副委員長
25年ほど前、私がインドの西ベンガル州にあるシャンティニケタンという大学に遊学していた時のこと。
私が間借りしていた家の門前に、突如現れたのが、パルバティでした。彼女はまだ高校を卒業したばかりの一人の少女、事情あって部屋を探していました。愛称は「ブリヤ―」、振舞いや言動が大人びていたから「老婆」を指す「ブリヤ―」と家族に呼ばれる、と説明してくれました。
それから一年、一緒に暮らしている間に時折、見せてくれた歌や踊りは、幼少時から習っていたカタックダンスやクラッシックソング、故郷で聞いた舟唄。力強いステップと深い歌声は、心に残る魅力的なものでした。とはいえ、当時、画学生だった彼女が志していたのは絵画。将来画家になるもの、とばかり思っていました。
その10年後、「ブリヤ―が世界を駆け巡るバウルになった」と聞き、その歌を初めて耳にしました。幼い時から訓練され、磨かれた「声の力強さ」と「ブリヤ―」と呼ばれた彼女の「深い成熟性」が一つにまとまり、体がまさにしびれるようでした。
この来日公演は、バウルの理屈はさておき、大勢の人に聞いて欲しいと思います。歌が放つ純粋な原初の力、そして慰撫の力があるからです。これは日本で数少ない、目が覚めるような公演になると信じてやみません。
佐藤友美(さとうともみ)「バウルの響き」制作実行委員会 委員長
「歌われる詩」というものに惹かれてインドまで住みに行って、南インドのケーララ州で南インドの古典声楽を学んでいました。しかしその深さ・美しさに惹かれ、楽しみながらも、どこかで「私が一生をかけるものは、これでは無いのではないだろうか」という想いを抱えていたのです。パルバティ・バウルについて聞いたのはそんな時で、彼女の許に初めて行った時、私はバウルについて何も知りませんでした。
今にして思えば、私が求めていたものは、歌でありながら、歌でないものでした。それから4年が経ち、今もバウルの道へ深く分け入ろうとしていますが、未だに何も理解できたとは言えません。バウルの何が特別なのか、何が人を惹き付けるのか、私自身明確には説明できないままですが、ただただ魅了されて滂沱の涙を流すしかない人々を、たくさん見て来ました。
今回、井生明さんと阿部櫻子さんという強力なサポートを得られることになり、師匠の来日ツアーを企画・実現できる運びとなりました。公演だけでなく、ワークショップも企画しています。この上ない体験をする機会になりますので、ぜひご注目ください。
委員略歴
実行委員長
佐藤友美(さとう ともみ)/ 翻訳家 パルバティ・バウルに師事
1986年埼玉県に生まれ、4−10歳をオーストラリアとシンガポールで、十代を日本で過ごす。青夏会の松本一に画を師事、定期的に個展を開催。十代から武道等を通して身体に取り組む。オーストラリア国立大学でサンスクリット語と言語学を学び、「歌われる詩」に興味を持ち、在学中に訪れたインドで南インド古典声楽を経験する。また、意味論の権威アンナ・ウィアツビッカ教授に学ぶ。
大学卒業後にケーララ州の企業に就職。働きながら南インド古典声楽とケーララ州の音楽に取り組むが、パルバティ・バウルとの出会いによりバウルの歌とその表現に魅せられ、師事してバウルの道に入る。現在は辞職し、修行のため日印を行き来する生活を送っており、日本滞在時は武州里神楽の舞を学ぶ。
バウルの言葉であるベンガル語や、パルバティ・バウルの居住地であるケーララ州のマラヤーラム語を解し、またバウル修行の一環としていわゆる「ヨーガ」にも取り組む。
パルバティ・バウル主催で年に一回開催されるバウル・リトリートでは、オーガナイズの中心的役割を担っている。
2017年1月より公演を許され、公演活動を開始。
http://www.tomomiparomita.com/
副委員長
阿部櫻子(あべさくらこ)/映像制作ディレクター、25年に及ぶパールヴァティ・バウルの友人
1968年東京に生まれる。1992年アジア・アフリカ語学院インド語(ヒンディー語)科卒業。同年、3年有効のヴィザを抱えてインドへ。インドのビハール州に伝わるミティラー画に魅せられ、画家の家族と共に村に滞在。その後、ウェスト・ベンガル州シャーンティニケタンのターゴル国際大学へ。そこで同大学に入学前のパルバティ・バウルに出会う。入学前だったため、寮に入れず住む家に困っていた彼女と大学入学までの1年間ルームシェアをする。以来、友人関係を25年以上結んでいる。
著書に『インド櫻子一人旅』(2009年 木犀社)。
現在はTVのドキュメンタリー制作のディレクターとして日本で働く。NHKBSの『日本の名峰』『にっぽん心の仏像』『グレートサミッツ』『にっぽん百名山』『井川遥 スープひとくちの幸せ』など作品多数。
ギャラリーDeepdanを運営。
事務局長
井生明(いおう あきら)写真家・イベントプランナー・ロシア語通訳
1971年北九州市生まれ。南インド古典音楽を中心とするインドの文化を精力的に日本に紹介する写真家。2008年末からは2年半に亘り南インドのチェンナイ(旧マドラス)に住み込み、現地の古典音楽シーンを楽器職人に至るまでつぶさに撮影。インド人ライターとの共著「Carnatic Music」を現地にて出版。2011年に帰国後も自身が企画するイベントを通じてインドの文化を紹介。ともにインド滞在をした妻と仲間とともに「南インドカルチャー見聞録」を上梓。2016年4月にはチェンナイからグラミー賞受賞者ヴィックゥ・ヴィナーヤクラーム氏をはじめとるする5人の音楽を招いてのツアー「天上のリズム」を企画・主催、東京・浜松で公演を行い1000人近い人々を動員し、好評を得る。2017年4月には玉川大学出版より南インドの古典舞踊を習う少女のデビュー公演を題材にインドの文化を紹介する小学生向けの本を出版予定。